介護の仕事をしていると、アセスメントがとても大事にされます。
利用者さんのことを知るために、生い立ちや性格、家族関係、趣味、生活歴など、たくさんの情報を集める。
特に真面目な人ほど、細かく丁寧に調べようとします。
「これだけ知っている」と情報量の多さに満足してしまうこともあります。

でも、時々思うんです。
私たちは何のために、そこまで情報を集めているのだろう？と。
目的が曖昧なまま情報を集めすぎると、必要のないことまで踏み込み、本人のプライバシーを侵してしまうこともあります。
“その人らしさ”を知ることと、“その人のすべてを暴くこと”は、まったく違うと思うのです。

そしてもう一つ、「その人らしさ」とは何なのか？
昔の趣味や仕事、家族との関係を掘り下げて「その頃に戻してあげたい」と考える支援者もいます。
でも、昔の自分に戻りたい人ばかりではありません。
年齢を重ね、経験を積んで、今は違う考え方や価値観を持っているかもしれない。
“昔の自分”より、“今の自分”を大切にしたい人もいるのです。
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最近、もうひとつ感じることがあります。
利用者の身体の状態、あざや湿疹などは細かくチェックして報告する。
それはもちろん大切なことです。
でも、その一方で「今日、どんなことが楽しかったのか」という報告はほとんど聞かれません。
報告書には「不穏」「転倒」「発赤」「拒否」など、マイナスの言葉ばかりが並ぶ。
家族がそれを見て、どんな気持ちになるでしょう。
「今日も楽しく過ごしていましたよ」と一言添えるだけで、家族の心はどれだけ安心するでしょうか。
私たちは、利用者の“何”を見ているのだろう？
“危険のない1日”を確認することだけが目的ではないはずです。
その人が「今日も来てよかった」と思える時間を過ごすこと、そしてその思いを家族と共有することが、私たちの大切な仕事のひとつだと思います。
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“その人らしさ”とは、過去でも、記録でもなく、
「今この瞬間をどう生きているか」という姿の中にあります。
アセスメントや記録のために人を知るのではなく、
その人が今日をどう感じ、どんな笑顔を見せたか。
そこにこそ、本当の“その人らしさ”があるのだと思います。