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管理者のつぶやき


スケジュールの弊害

小さい頃から「日課をこなす」ことを教え込まれ、それが美徳とされてきた私たち。
つい施設でも「やるべきこと」を守ることに重点を置きがちですが、
その習慣をそのまま他者に当てはめると、思わぬ行き違いが生まれることがあります。

ある日の手洗いの場面。
「○○さん、手を洗いましょう」
「今?面倒くさいなあ…」
「では、手指消毒だけでもしておきますか?」
「そうか、じゃあそれで」
無理に手を洗わせなくても、消毒で代用するだけで安心です。

食事の時間も同じです。
「まだ残ってますよ、全部食べないんですか?」
「今日はお腹いっぱいで無理」
「そうですか。では、残りは後で召し上がれますね」
「うん、ありがとう」
こうした柔軟な対応で、利用者さんは自分のペースで食事ができます。

残すことも、後で食べることも、立派な選択です。
大切なのは「全量食べる」「必ず手を洗う」といったゴールではなく、
その人にとって自然で心地よい関わり方。

スケジュールに縛られすぎず、
一人ひとりの気持ちに寄り添う柔らかさを忘れないようにしたいものです。


“元に戻す”ではなく、“今を生かす”

デイサービスには、いろんな形の“愛”が訪れます。
その中には、長い時間を共に歩んできたご夫婦の愛もあります。

先日、あるご主人がこうおっしゃいました。
「妻は前みたいに元気になると思うんです。もっと勉強してくださいよ」

その言葉には、奥さまへの深い愛情と、もう一度笑顔を取り戻したいという願いがにじんでいました。

奥さまは今、認知症が進行し、少しずつ意欲が低下しています。
それでも、デイサービスに来ると、少し体を動かし、他の利用者さんと笑顔を交わされます。
ほんの短い時間でも、その瞬間は確かに“生きている力”を感じます。

ご主人は、奥さまが「元に戻る」と信じておられます。

その気持ちは痛いほどわかります。
誰だって、大切な人が変わっていく姿を受け入れるのは簡単ではありません。
それほどまでに深く愛しておられるのです。

けれど、認知症は“努力で元に戻す”ものではありません。

私たちは、“今の力を生かして生きる”お手伝いをしています。

歩ける距離を少しでも保つこと。
笑顔の時間を一分でも増やすこと。
それが、その人らしく生きるための支えになります。

介護は、「あきらめること」ではなく、「受け入れること」の連続です。
そして、受け入れることは、愛を手放すことではありません。
むしろ、愛を新しい形に変えていく過程なのだと思います。

私たちは、ご本人だけでなく、ご家族の思いにも寄り添っていきたい。
ご主人のまっすぐな愛情も、奥さまの静かな笑顔も、どちらも守れるデイサービスでありたいと思っています。



「自分で決める」を大切に

おびこでは、どんな小さなことでも「自分で決める」ことを大事にしています。
自分の意思で選ぶことが、その人らしさや毎日の楽しさにつながるからです。

でも、皆さんの状況はさまざまです。

「今日は何をしたいですか?」
と聞いて、すぐに
「編み物がしたい」 「散歩に行きたい」
と答えられる方もいれば、考え込んでしまう方もいます。

そんな時は、聞き方を工夫します。

たとえば
「散歩と塗り絵、どちらがいいですか?」
と具体的に尋ねると答えやすくなります。
食事の時なら「お茶とコーヒー、どちらにしますか?」といった声かけです。

服を選ぶときも「赤と青、どちらにしましょう?」と聞くと、
自然に好みを表せます。
お昼の席を「窓際と真ん中、どちらにしますか?」と選んでいただくのも、
その方の意思を尊重する工夫のひとつです。

もし言葉で答えるのが難しくても、
笑顔やしぐさが気持ちを教えてくれることもあります。
好きな音楽が流れたときの表情や、手にしたものを離さない様子
──それも立派な「決めた」というサインです。

「自分で決めた」
という実感は、小さなことでも心を満たし、毎日の意欲につながります。

おびこでは、そんな瞬間を大切にしていきたいと思っています。



「してください」のその先にあるもの

「○○さん、そろそろトイレに行ってください」
「今?…まだテレビの続きが気になるんだよ」
「大丈夫です、行ってください」

介護の現場では、こんなやりとりが日常的にあります。
言っている側は丁寧なつもりでも、
受け取る側には「命令」に近く響いてしまうこともあります。

「してください」という言葉は、「しなさい」をやわらかくした表現にすぎず、
実は強いニュアンスを含んでいます。
たとえば食事の場面なら、「食堂に行ってください」よりも
「ご飯のいい匂いがしてきましたね。一緒に行きましょうか」と声をかける方が、
自然と気持ちが動きます。

入浴の時も同じです。「お風呂に入りましょう」よりも
「今日は寒いですね。お風呂で温まったら気持ちよさそうですよ」と伝えるだけで、
受け取る印象は大きく変わります。

そして時には、利用者さんから「今日はパス!明日入りゃいいべさ」と返ってくることもあります。
これも立派な意思表示であり、小さなわがままではなく「やらない」という選択です。

介護の現場では予定をこなすことを優先しがちですが、
やらないことも含めてその人の意思を尊重することが、
本当の意味での寄り添いにつながります。
「してください」に潜む小さな違和感に気づくことで、
現場はもっと柔らかく温かくなるのではないでしょうか。


今日を大切にすること

つい先日、長期にわたりデイをご利用くださった方が亡くなりました。

民謡が大好きで、利用初期には仲間をデイに呼び、みんなで歌ったこともありました。 体力が落ちて歌わなくなった時期もありましたが、 今年に入りカラオケで再び声を響かせることができました。

そして7月下旬の民謡ボランティア演奏会では、仲間の三味線に合わせ、 得意の「あいや節」を堂々と歌い上げてくださいました。
それが最後の歌声となりました。

この方はいつも「ここに来たら元気になる」と口にされていました。
ちょっと疲れていた日も、施設に入ると自然と顔がほころび、
スタッフや周りの利用者さんにも元気が伝わる存在でした。

認知症デイの現場では、利用の終わりは突然やってきます。
転倒や病気で自宅に戻れなくなること、施設入所が急に決まることもあります。
振り返れば「あの日が最後の利用だったんだ」と気づくことも少なくありません。
だからこそ、私たちは「明日は来ないかもしれない」と心に留め、
今日できることは今日のうちに大切に積み重ねるようにしています。

外出も、食事も、語らいも、その日のうちに思い切り楽しむこと。
スタッフもご家族も共に寄り添い、一日一日を温かく見守る。
それが、最期までその人らしく過ごすための大切な一歩です。

「ここに来たら元気になる」と言っていたその笑顔を胸に、
私たちも温かな記憶と共に前を向いて歩んでいきたいと思います。


何でもやる?何でもやらされる?

見学に来られた方から、よくこんな言葉をいただきます。

「ここは何でもやるんですね」

その言葉には、いろいろな受け止め方があります。
「出来ることは何でもしていて、すごい!」と笑顔で言ってくださる方もいれば、
「何でもやらされて、ちょっとかわいそう」と心配そうにおっしゃる方もいます。

実は、どちらの見方も大切なんだと思います。
たとえば、利用者さんが落ちたゴミを拾おうとしたとき。
スタッフがすぐに拾ってあげることもあれば、あえて見守ることもあります。

「体が動くうちは、自分でできることを大切にしたい」――そんな思いからです。

でも、外から見たら「お年寄りに拾わせるなんて…」
と映ることもあるかもしれません。
だからこそ、大切なのは「その人自身はどう思っているのか?」ということ。

「拾ってもらいたい」かもしれないし、

「自分でやりたい」かもしれません。

正解は介護者の中にあるのではなく、その人の中にあります。
だから私たちは、ひとりひとりの気持ちに耳を傾けながら、

「どうするのが一番心地いいかな?」を一緒に考えていきたいと思っています。

それが、おびこが大切にしている“寄り添うかたち”です🌱



デイサービススローライフおびこ

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